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日本医科大学医学部長 小澤一史先生

日本医科大学医学部長 小澤一史先生
大学のViewpoint

Q1.先生のお考えになります日本医科大学の良さはどのようなところでしょうか。

日本医科大学は創立140年を迎えた日本最古の私立の医科大学です。源流の済生学舎を立ち上げたのは長谷川 泰先生ですが、その後、「長谷川家」という創業家が運営してきたわけではなく、多くの関係者が民主的に学校運営に参画してきた大学ですので、その歴史や伝統があり、皆でしっかりと議論、意見交換をし、意志決定していくプロセスを大切にしていると思います。
私が本学に教授として赴任した際、「私学であるから、ある程度中枢部の意志決定が決まっていて、教授会等もそれに従う形かな」と思っていたのですが、実際は教授会等でも喧々諤々の議論をおこない、長時間にわたって会議が行われるようなこともありました。また、当時は新人であった私でもきちんと意見を求められることもあり、「皆で考える」姿勢を強く感じたものでした。
考えを押しつける、トップダウンで全てを進めるのではなく、関係する人々の意見もきちんと確かめ、意見交換をする姿勢がしっかりと根付いているということだと思います。従って、日本医大出身者が母校のために努力することは当然ですが、他学から加わった教員も皆「母校」という意識で業務に参画し、いわゆる「学閥」的な感覚、動きがなく、公平な目で見る姿勢が優れていると思います。
ここ数年間の主任教授選考などを見ても、全国視野に立った選考で、実力のあるものを選ぶ姿勢が貫かれています。また、私自身が他大学出身者ですが、そのようなこととは関係なく、現在、大学の医学部長という要職に選ばれていることも、まさに日本医科大学の姿勢を示していると思います。こういったことを含め、日本医科大学は真面目で実直な人々の集まりの組織ということも出来ると思います。そのことが、時として「地味」に感じられることがあるようですが、私はこの「堅実性」は本学の優れた部分だと思っています。
また、千駄木、千葉北総、武蔵小杉、多摩永山の4つの付属病院が、それぞれの個性を持ちながら近隣住民の方々を大切にしており、例えば俗に言う「VIPルーム」を多数準備するといった感覚ではなく、それぞれの地域の患者さんにも、我が町の病院といった親近感をもって接してもらうような心遣いが、培った伝統の中に無意識に組み込まれている優しさを感じます。
特に本学は「救急医療」「集中医療」については定評があり、千駄木地区に建設中の新病院は他に類を見ない未来型施設と自負しております。もう一つ「がん治療」については、2013年実績で都内大学病院トップの手術件数・化学療法数となっております。この実績は、日本医科大学の学是である「克己殉公」(我が身を捨てて、広く人々のために尽くす)の遺伝子ではないかと感じます。この大学としての姿勢をOB、現役の学生が誇りとして堅持していくことが我々の誇りです。

日本医科大学

Q2.日本医科大学の教育の特徴と取り組みを教えていただけますでしょうか。

平成26年より新しいカリキュラムが導入されました。現在、国が推進している「国際認証基準」に合致した体制をいち早く取り入れ、将来の国際基準に合った教育課程を組み込むために行ったカリキュラム改定です。
これまでの日本における臨床医学実習(ベッドサイド臨床実習学修、BSL)は6年間の中で約50週程度でしたが、国際基準では70週近い時間の実習が求められています。そこで、本学においてもその基準に合うように、新カリキュラムではBSLを70週に増やしました。
医学部の6年間という時間に変わりはないので、そうなるとどこかを短縮するなりしなければなりません。一番多いパターンは教養課程の短縮でしょう。しかし、本学では、人としての基本となる「教養」は大事な学問、大事な時間と捉え、教養教育(本学では基礎科学と称しています)の削減を最小限に留めました。
また、基礎医学においても削減を最小限に留める工夫を導入しました。これまで、90分1コマで午前2コマ、午後2コマの仕組みであったのを1コマ70分とし、朝の始まりを20分ほど早め、午前3コマ、午後3コマの授業体制に組み替え、これによってBSL増加分の他への影響を最小限に抑えることが出来ました。ですから、かなりみっちりと学修するカリキュラムです。
学生諸君は大変だろうとも思いますが、そもそも医学部は他に比べて、学びが非常に多い学部です。私が尊敬する金沢大学医学部名誉教授の河﨑一夫先生は平成14年4月16日付けの朝日新聞の「私の視点」に「医学を選んだ君に問う」という有名な論説の中で、「医学生に『よく学び、よく遊び』は許されない。医学生は『よく学び、よく学び』しかないと覚悟せねばならない。」という厳しい言葉を示されています。
私は全く同感であり、「よく学び、よく遊びをするためには、先ずはよく学び、よく学びを実行せよ」と学生諸君に話しています。「きつい」、「厳しい」という現役の学生諸君の意見も耳にしますが、一方で、卒業したOBからは「今になって振り返ると、あの時の学びが大変に役に立っている」という声もあります。
我々教育者は、後々に「役に立った」と言われることが大切であり、将来に繋がる教育、社会の期待に沿える成果を生み出す教育を意識しています。新しいカリキュラムも、医学生としての6年間だけでなく、その先にまでシームレスに繋がる教育体系を考えて導入しました。
医師という職業を考えた場合に、単に豊富な知識、秀でた技術があるだけでなく、なんといっても優れた人間性が大切です。人として、医師としての倫理性、論理性の成熟も必要です。人間性を高めるための特別プログラムをカリキュラムの中に導入し、生と死、尊厳、ものの善悪などを真剣に考え、討議する時間を設けています。
よく学び、よく学びのためには、健康な身体、体力も身につける必要があります。学生が活発にクラブ活動も行っており、健康な身体・体力、健康な心を身につける場も大切にしています。また、法人下に国際交流センターが設置されており、海外の大学と協定を結び、積極的に短期留学等で世界を学ぶグローバルな目を養うことにも力を入れてきました。
このような中で、医師国家試験の成績も新卒者においてはこの数年間、常に95~98%の好成績を維持し、またあまり表には出ませんが、ここ数年間は、残念ながら国家試験に不合格になった諸君もその翌年には全員が合格するという状況が続いています。
これらの教育に関する大学の中枢は「教務部委員会」という委員会が教務部長の指揮下に担当しますが、その教務部委員会には大学院医学研究科長、医学部長、学生部長、医学教育センター長など執行部のメンバーが皆加わり、学長もオブザーバーの立場で、毎回委員会に出席し、熱心に教育の諸課題を解決しています。
2015年からは新しく医学教育センターが構築され、様々な医学教育技法等についても真剣に研究しています。このような全学的な体制によって医学教育をしっかりと考える仕組みが構築されていることも本学の特徴と言えるでしょう。

日本医科大学

Q3.受験生の方が日本医科大学へ入学し、勉強することになった際の心構えなどありますでしょうか。

日本医科大学では入学してほしい学生として、以下のアドミッションポリシーを公開しています。

  1. 医学を学ぶ目的意識が明確で、医師、医学者となるに必要な知識・技能の修得のために自ら努力する人
  2. 生命倫理を尊重し、医学を学ぶための知識・知性および科学的論理性と思考力を備えた人
  3. 病める人の心を理解し、相手の立場で物事を考えることができ、主体性を持ちつつ協働して学ぶことのできる人
  4. 社会的な見識を有し、周囲との協調性を尊重しながら、自らを表現し、判断できる人
  5. 世界の医学・医療の進歩と発展に貢献する強い意欲のある人

そして、卒業時にはこういう力を持った学生にすることを到達目標としますよという「コンピテンス」を以下の様に定めています。

  1. 克己殉公の精神を受け継ぐプロフェッショナリズム
    日本医科大学医学部学生は卒業時にその時代における克己殉公の精神のあり方を自らの文脈の中で理解し、医療の専門家としての自覚と倫理観に基づいて行動することが出来る。
  2. コミュニケーション能力
    日本医科大学医学部学生は卒業時に多様な立場や考え方を理解し、尊重し、共感力をもって他者と接するコミュニケーション能力を持ち、医療の現場における良好な人間関係を構築することができる。
  3. 統合された医学知識
    日本医科大学医学部学生は卒業時に基礎科学、基礎医学、行動科学、臨床医学、社会医学の知識をもち、統合した形で問題解決に応用することが出来る。
  4. 実践的診療能力
    日本医科大学医学部学生は卒業時に患者中心の視点に立ち、臨床研修現場において適切な診療を行う能力を獲得することができる。
  5. 科学的研究心と思考能力
    日本医科大学医学部学生は卒業時に生涯を通じて、医学の進歩に関心をもち、科学的探究心を維持し、問題に対して論理的、批判的思考をもって行動することができる。
  6. 人々の健康の維持、増進を通じた社会貢献
    日本医科大学医学部学生は卒業時に社会の現状を認識し、医療人の立場から人々が健やかに暮らせる社会の構築に努めることができる。
  7. 次世代の育成、教育能力
    日本医科大学医学部学生は卒業時に大学の教育、研究、医療における理念を次世代に受け継いで行く使命を認識し、チームにおけるリーダーシップを発揮しつつ後進の指導を行うことができる。
  8. 豊かな人間性と国際性
    日本医科大学医学部学生は卒業時に人類と生命に対する「愛」を内包する豊かな人間性をもち、日本のアイデンティティを尊重しながら、広く世界に目を向け行動することができる。

これらの日本医科大学の考え方、方向性をよく理解し、医師を目指すことの責任と重みをしっかりと理解して臨んでほしいと期待します。私たち教授陣も真摯に努力し、学生諸君が優れた医師として活躍できるように、最大限のサポートをしていきます。従って、学生諸君には、大人の品格、常識、良識を持ち、日本医科大学という名を背負う気概を持って学んでほしいと思います。

日本医科大学

Q4.日本医科大学を目指される受験生や保護者の方々へのメッセージをお願い致します。

医学部は、数ある大学の学部の中でも、学修の目的がはっきりしており、また学力に加えて人間力も必要とされる、独特な学問領域だと思います。その中で学ぶためには、夢も必要ですが、現実を乗り越えるための強い意思が必要です。そのためには、まず、医学部を目指すという決心と生き方の哲学が重要だと思います。
「なんとなく医学部」、「みんなから勧められて医学部」は幸せではありません。一回きりの人生において、自分の生き方、職業を自分で納得して選択することは極めて重要です。受験生は、まずそこをしっかりと考え、保護者の方も自分の子供にあった人生、職業は何かをその子供の特性も考慮に入れて考えてあげてほしいと思います。
次に、医学部はバラ色の生活だけではありません。「こんなはずではなかった」と思うほど、厳しい部分もあります。「よく学び、よく遊び」が実現できるためには「よく学び、よく学び」が当たり前のように要求されます。これもよく理解してください。そして、個を捨てて(個を取りあえず横に置いて)、社会のために尽くす思いがなければ優れた医師にはなれません。そのこともしっかりと意識して医学部を目指すことを考えてほしいと思います。

関連リンク 日本医科大学ホームページ

おざわひとし
小澤一史先生 略歴

略歴
1984年3月 東京慈恵会医科大学卒業
同年4月 同大学解剖学教室助手
1988年5月 群馬大学内分泌研究所形態学部門助手
1992年~1994年 フランス国立科学研究所客員研究員
1995年6月 京都府立医科大学解剖学教室講師
1999年6月 同 助教授
2005年4月より 日本医科大学大学院医学研究科 解剖学・神経生物学分野 大学院教授、現在に至る。

活動
日本解剖学会代議員、第123回日本解剖学会学術集会(2018年)会頭
日本神経内分泌学会理事、日本顕微鏡学会理事、日本組織細胞化学会理事、日本臨床分子形態学会理事

主な著書
トートラ解剖学(丸善出版、共同監訳者)
Big Picture解剖学(丸善出版、代表監訳者)
集中講義 解剖学 (Medical View, 分担執筆)
臨床のための解剖学(メディカル・サイエンス・インターナショナル、分担執筆)
解剖学・発生学 (東京化学同人,共同監訳)
カラーアトラス機能組織学(医歯薬出版、分担執筆)