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元横浜市立大学医学部医学部長 井上登美夫先生

医学部進路の決め方

Q1.横浜市立大学医学部の特色を教えていただけますでしょうか。

横浜市立大学は神奈川県、特に横浜市の地域医療を担う大学として臨床医を多く輩出してきました。本学の使命は、地域医療の担い手たるプライマリ・ケア医をはじめとする医師に加え、生命科学、医学、医療の分野をリードする臨床医、医学研究者、医療行政官など、医学・医療の分野における指導的な立場に立てる医師・研究者を育てることと考えています。そのため、基礎科学から先端医療まで、幅広い分野で活躍するための基本となる医学・医療倫理と知識、技術の習得にも力を入れています。
一方で、近年は、国家試験が難しくなったこともあり、留年する学生が年々増えつつあり問題となっています。これは全国的な傾向であり、全国の医学部長が集まる会議でも話題に上っています。本学では留年せずに進級するためには、学生が能動的に学習することが必要だと考え、グループ学習を通してトレーニングを行っています。
また、学生が六年間医学の勉強を続けるためには、モチベーションの維持が重要です。学生は、医師を専門化された特殊で狭い領域を扱う職業だと思いがちですが、実際の医師の仕事は多岐にわたります。一年生は医師として大切な要素である教養の授業を受けていますが、実際の医療現場を早く体験させ、医師という職業への正しいイメージを持ってもらうためにも、福祉施設での実習活動を行っています。
更に、学生にグループ医療を意識させるために看護学科と合同の連携授業を実施しています。来年、改訂されるコアカリキュラムにおいても実際の医療現場に即した地域包括ケアが中心に据えられると考えられます。これを受けて、地域医療や患者とのコミュニケーションを重視した卒前教育をこれからも推し進めていきたいと考えています。
また、国際認証への対応を踏まえて海外の医療現場での体験学習が重要と考え、短期の海外留学を大学のプログラムとして実施することを考えています。将来的には医学部生の三割に留学を経験してもらうことを目標にしています。学生だけでなく、教員にも海外の大学でのワークショップに参加してもらうことで本学での教育における国際化を図っています。大学としても海外の大学との施設間提携を行って、国際的な環境を整備していきます。
卒業生の多くが、横浜市および神奈川県、東京都など、大学近隣で働いているのも特徴の一つです。地域医療における良き医療人であることも、目指すべき医師像の一つです。以前は神奈川県、東京都から入学してくる学生が大半でしたが、近年は遠方から進学してくる学生も増加傾向にあります。神奈川県の地域医療を支えるためにも、地域枠の推薦入試を設けて神奈川、横浜の医療ニーズにこたえる人材を養成しています。また、横浜市内で働く医師の半数は何らかの形で本学と関わりがあることを活かして、研修の際に各病院との連携関係を築くことができています。横浜は人口が多いことから医療ニーズは大きく、本学も全国から多くの研修生を受け入れています。

横浜市立大学

Q2.横浜市立大学医学部が、育成したい医師像、そのための教育カリキュラムの特徴について教えて下さい。

近いうちに、日本は超高齢社会を迎えます。これは医療の構造的変化などをもたらすと予想され、今まで以上に実践的な医療が求められます。また医学の進歩に伴い、基礎と臨床をつなぐトランスレーショナル・リサーチの重要性も高まってきます。社会のグローバル化に対応できる人材育成も急務です。本学が育成したい医師像は、まさに、このような変化に対応でき、適切な活動、行動により医療を支える実践的能力とリサーチマインドを持った人材です。
このため、カリキュラムについては、先ほど少し触れましたが、第一に「自ら学ぶ学習」と題し、能動的な学習手法の導入に積極的に取り組んでいます。具体的には、シミュレーターの活用などによる医療体験教育の充実に取り組んでいます。また、地域における福祉、保健、医療施設での実習や、基礎・臨床教室での体験型学習としての教室体験演習や研究実習(リサーチ・クラークシップ)、臨床参加型病棟実習(クリニカル・クラークシップ)にも取り組んでいます。
第二に、「学びと成長を促す快適な環境づくり」を目指し、学習教育支援体制の確立に力を入れています。学年担任を配置し、学習、生活、進路などの相談に応えます。また医学教育センター・医学教育学教室を整備し、支援体制を充実させています。
 第三に、「地域医療を担う人材の育成」のために、実践的な地域基盤型の医療教育体制の整備に努めています。具体的には、地域における福祉施設での実習を行い、地域保健医療学を学ぶ。地域診療所や小規模病院における臨床実習を拡充し、地域医療施設における指導者への研修などを企画・実施していきます。
また、今後はAI(人工知能)がますます発達することを見越して、教育にも変化が起こるだろうと考えています。今までは魚の種類を覚えるような学習を行ってきましたが、これからは魚の釣り方を覚えるような学習を行う必要があると思います。自分で学び、会得していく方法を教えることを重視していこうと考えています。

横浜市立大学医学部医学部長 井上登美夫先生

Q3.ご自身が、医師を目指されたきっかけや受験勉強でのエピソード、人生のターニングポイントなどについて、お聞かせ下さい。

私は埼玉県生まれです。高校は県立浦和高校に進学しました。同校は医師を目指す人が多い高校で私も医師を目指して勉強していました。部活動も熱心に行うことで有名で、勉強に関しては生徒の自主性に任せる校風でした。大学受験ではご縁頂いた群馬大学医学部に現役で進学しました。放射線の研究に進むきっかけは恩師との出会いでした。新しい技術に触れたことで興味を持ち、研究の道に進みました。群馬大学で研究を続けていましたが、横浜市立大学が公募を出していることを知り、採用していただきました。何の縁もゆかりもない私でも快く受け入れてくださる懐の深さも、この大学の素晴らしい点の一つだと思います。

横浜市立大学

Q4.最後に、横浜市立大学医学部の受験を考えている学生にメッセージをお願い致します。

本学は医学研究科、附属2病院と連携して医学教育を行うことで、医学・医療分野における課題を解決するための創造的研究を推進し、最新の医療技術を臨床現場に導入しています。この恵まれた環境の下、全人的医療を実践できる人材、本学の基本方針でもある”地域貢献”と”国際化”に寄与できる医療人材の育成を推し進めています。
本学に入学してほしい学生としては、意欲のある学生を第一に考えています。大学が求める学生像に関してはアドミッション・ポリシーを参考にしていただければと思いますが、個人的にはクリエイティブな発想力を持った学生を求めています。
本学は人数も少なく、家族的で教員と学生との距離も非常に近い大学です。温かい雰囲気の中で勉強に集中していただけると思います。学部、大学院の連携もしっかりしており、医師としてのキャリアの礎を築くことも可能です。ぜひ本学をご検討いただければと思います。

関連リンク 横浜市立大学ホームページ

いのうえとみお
井上登美夫先生 略歴

略歴
昭和52年 3月 群馬大学医学部 卒業
同年 4月 群馬大学 教務部 医学部放射線医学講座 入局
昭和55年 1月 群馬大学医学部附属病院 中央放射線部 助手
昭和57年 7月~昭和60年 関東逓信病院 放射線科
昭和60年 5月 群馬大学 医学部 核医学講座 助手
平成 1年 同 講師
平成 4年 同 助教授
同上 附属病院 放射線部 助教授 (兼任)
平成 6年 6月より7年 8月まで 米国テキサス大学 M.D.Andersonがんセンター 診断放射線部 核医学部門に留学 Post-doctorial fellow
平成 7年 9月 群馬大学 医学部 核医学講座 助教授
同上 附属病院 放射線部 助教授 (兼任)
平成13年 9月 横浜市立大学医学部 放射線医学講座 教授
同上 附属病院 放射線部 教授 (兼任)
平成15年4月 横浜市立大学大学院医学研究科 放射線医学 教授
平成20年8月より23年4月まで 横浜市立大学 先端医科学研究センター長 (兼任)
平成26年4月より28年5月まで 横浜市立大学 附属市民総合医療センター 病院長(兼任)
平成28年6月~ 横浜市立大学 医学部長、医学教育センター長(兼務)

学会活動
平成23年11月より27年10月まで 日本核医学会 理事長
平成24年4月より 日本医学放射線学会 理事


昭和58年 第21回 日本核医学会賞
平成15年 3月 貢献賞:「第35回日本原子力学会賞」社)日本原子力学会より