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大阪市立大学医学部 特任教授、名誉教授 大畑建治先生

医学部進路の決め方

Q1.大阪市立大学医学部の特徴についてお聞かせください。

大阪市立大学医学部のある四天王寺の周辺は文教地区として有名です。進学校と呼ばれる高等学校も数多くあり、古くから教育に熱心な地域で医学を学ぶことが可能です。近年、この周辺は再開発が盛んな地域でもあり、梅田のような賑わいはありませんが、都会的で多様な雰囲気の中で勉強ができると思います。入学生は関西圏出身の学生が多く、近隣の名門校から多数の学生が入学してきています。

大阪市立大学

Q2.大阪市立大学医学部の教育の特色についてお聞かせください。

分野別国際認証に対応するために、本学のカリキュラムも変更を加えつつあります。目標とする新しいカリキュラムでは、臨床実習時間が増えることが大きな特徴で、学生はアクティブラーニングに取り組む機会が増えることになります。脳外科出身の私にとって、アクティブラーニングは修行時代からの習慣でした。外科医にマニュアルは存在しない、あってはならないと先輩に指導され、昼は患者と向き合い、夜は本を読んで修行する毎日でした。脳外科は昔からカンファレンスを英語で行っておりましたが、この機会に医学部全体としても臨床系カンファレンスを英語で行うように依頼しています。海外の大学と協定を結んで留学生や教員を受け入れる狙いもあります。この改革によって、国際化を推し進めています。
学生には自主的な学習を行ってもらうことを求めています。グループ学習を行うスペースを増設することで、学生にも良い効果が生まれていると実感しています。国際認証に準拠したカリキュラムと、日本的な医学教育の長所をうまく合わせることで、医学教育をより良いものにしていきたいと考えています。
それ以外でも、外科に進んだ医師や女性の医師が学位を取りやすいような環境をテニュア・トラック制度(※公正で透明性の高い選考により採用された若手研究者が、審査を経てより安定的な職を得る前に、任期付の雇用形態で自立した研究者として経験を積むことができる仕組み)と同じコンセプトの制度を導入する予定です。外科医は診察や手術に追われ、なかなか大学院と仕事を両立することは難しい現状があります。また、出産、育児のために一度仕事から離れざるを得ない女性の医師への支援にも活用できればと考えています。
更に、トップクラスのデザイナーを客員教授に迎え、授業をしてもらうなど、医学部の枠や従来の慣習にとらわれない、新しい試みを多く行っています。これからも、組織を改革し、新しい提案を形にして、より良い医学部を作っていきたいと考えています。

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Q3.先生ご自身のことについてお聞かせください。

私は島根県の隠岐の島出身です。島根は日本古代の歴史が深く根付いた土地であり、子供の頃から日本の神話などに触れる機会が多くありました。高校は島根県立益田高校に進学しましたが、田舎の高校でしたので受験に対応できず、一浪して勉強しました。浪人時代は京都で過ごしましたが、大学受験と並行して、禅宗に入門することも考えていました。京都の予備校では常に首席で、次第に予備校がつまらなくなり、浪人生活の後半は下宿で過ごしました。高校時代にシュバイツァーの本を読んだことをきっかけに自然科学に興味がありましたが、進路には大変悩みました。英語と数学には絶対の自信があって、文系と理系の大学を両方受験しました。慶応大学経済学部に合格したので、慶応に入学しようと上京しましたが、その後、大阪市立大学医学部に合格していることがわかり、悩んだ結果、大阪市立大学に進学しました。
医学部入学後は、「自分は何も知らない」、「精神的に弱い」という二つを痛感しました。二つの課題を克服するべく、少林寺拳法と野球部の二つの部活に所属して体を鍛え、貪るように本を読み漁る生活を6年間続けました。当時は学生運動が盛んだったこともあり、授業が休講になったり、試験が受けられなかったりという日々が続きましたが、様々な考えを持つ学生と議論するなど、活きた勉強も行うことができました。大学時代は特に読書に夢中になり、徹夜で読んだことを覚えています。人格形成のために、中国の古典や仏教、キリスト教の古典を読む日々を送りました。
卒業後は脳神経外科へ進みました。脳外科は厳しい世界でしたが、部活の練習に比べればそこまででもないと感じていました。仕事を始めた初日からやりがいを強く感じ、病院に住み込みで仕事をする生活をしていました。脳外科の世界は手術や処置の結果が患者の状態に明らかに反映される世界でした。これが自分の性格にぴったりはまり、医学書が真っ黒になるまで読み込むなど、まさに夢中になりました。当時の先輩は一から全てを教えてくれるような人はいませんでしたので、自分で勉強して先輩に見てもらいながら知識と技術を身につけて行きました。その後アメリカに留学しました。アメリカは有名ではなくても論文さえしっかりしていれば研究資金を得ることができ、研究の環境も整っていてとても有意義な経験をすることができました。解剖学者と組んで研究を行い、2年間で英語論文3本を書くことができましたが、当時は研究者になるつもりはなく、より良い臨床医になるための物事の考え方を学ぶつもりでした。研究はとても辛いものでしたが、自分の集めたデータを使って論文を書くことにはとても魅力を感じました。2年後、日本に帰国しようと思いましたが、当時の大阪市立大学の教授が頭蓋底という分野の専門家であり、頭蓋底のことを勉強してから帰国した方が良いとのアドバイスを受けたので、頭蓋底外科の臨床を勉強するためにドイツに渡りました。アメリカとドイツで多くの研究者の友人を作ることができ、その後の人生に大きな財産を得ることができました。
その後帰国し、日本でも海外で行ってきたように研究と臨床の両立を目指しましたが、当時の古い体質では両立を認めてもらえず、臨床のみに集中しました。仕事ばかりで(丑三つ時の)3時ごろ帰宅し、翌朝また出勤する生活で、家族の顔もあまり見ることができずに仕事に集中していました。努力の甲斐があって新しい手術法を考案することができました。世界中に私よりも優れた研究者はたくさんおりましたが、世界中の皆から「お前の術中の根性はすごい」と感心されたことは今でも私の誇りです。

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Q4.大阪市立大学医学部を目指す受験生にメッセージをお願いいたします。

勉強意欲があり、自分よりも他人のことを考えられて、チームワークができる人を求めています。これが全てではありませんが、コミュニケーションは医師として活躍していく上で非常に重要な能力の一つであると思います。
本学に入学すれば自由に勉強することができます。三年時には一ヶ月の海外留学ができますし、国際的な医学教育を受けることが可能です。
医師として診察する際に、自分の身内を診察しているのだと考えて治療することができれば、立派な医師になれると思います。ぜひ、意欲のある学生が入学してきてくれることを楽しみにしています。

関連リンク 大阪市立大学ホームページ

おおはたけんじ
大畑建治先生 略歴

役職
大阪市立大学 脳神経外科 教授
大阪市立大学 大学院医学研究科長・医学部長

学歴
大阪市立大学大学院医学部卒業 大阪市立大学大学院卒業

専門医
日本脳神経外科学会専門医 日本脊髄外科学会認定指導医

臨床担当分野
脳腫瘍 眼窩内腫瘍 脳動脈瘤 バイパス手術 脊髄腫瘍
脊髄血管障害 脊椎加齢性疾患 先天性疾患手術手技

研究課題
安全・確実な手術

免許・資格
昭和55年 医師免許下付
昭和61年 日本脳神経外科学会専門医
昭和62年 医学博士
平成15年 日本脊髄外科学会脊髄外科指導医

職歴・経歴
昭和55年 大阪市立大学医学部附属病院臨床研修医
昭和57年 大阪市立大学医学部附属病院臨床研究医
昭和58年 大阪市立大学大学院医学研究科外科系専攻入学
昭和62年 同終了
昭和62年 大阪市立大学医学部助手(脳神経外科学講座)
昭和63年 アメリカ合衆国バージニア医科大学リサーチアソシエート (脳神経外科研究部門)
平成 2年 ドイツ、マーブルグ大学フルダ市民病院医師 (耳鼻咽喉科顔面形成外科部門)
平成 3年 大阪市立大学医学部助手(脳神経外科学講座)
平成 4年 大阪市立大学医学部講師(脳神経外科学講座)
平成11年 大阪市立大学医学部脳神経外科学教室助教授
平成11年 イタリア ベローナ大学客員教授
平成15年 世界初の頭部結合双生児(成人)の分離手術で世界選抜チームの主執刀医とし参加(シンガポール、ラッフェル病院)。手術の経過はCNNで生放送された。
平成17年 中華人民共和国 首都医科大学 海外科学評議員
平成17年 インド ムンバイ(ボンベイ) セス・ゴードハンダス・サンダーダス医科大学・エドワード王記念病院 生涯名誉客員教授
平成18年 大阪市立大学大学院医学研究科脳神経外科主任教授(現職)
平成20年 東京医科大学医学部脳神経外科兼任教授(平成25年3月まで)

学会活動
昭和63年~ 日本脳神経外科学会 評議員
平成 7年 北米頭蓋底外科学会 Executive Committee Member
平成 8年~ 微小脳神経外科解剖セミナー 世話人
平成10年~ 大阪脳神経外科研究会 世話人
平成10年~ 日本レーザー医学会関西地方会 世話人
平成11年~ 日本頭蓋底外科学会 運営委員
平成11年~ 日本脳腫瘍の外科学会 運営委員
平成11年~ 関西脳神経外科懇話会 世話人
平成12年 微小脳神経外科解剖セミナー 会長
平成12年~ 日本脊髄外科学会 世話人
平成12年~ 日本Image Guided Neurosurgery 臨床研究会 運営委員
平成12年~ 日本聴神経腫瘍研究会 世話人
平成12年 脳神経外科手術と機器学会(CNTT) 運営委員
平成13年 日韓脊髄外科カンファレンス Executive Committee Member
平成14年~ 世界脳神経外科学会連合 (WFNS) 頭蓋底外科部門 運営委員
平成15年~ 社団法人日本脳神経外科学会 代議員
平成16年~ 日本頭蓋底外科学会 理事
平成17年~ 日本脊髄外科学会 理事
平成17年~ 日本脳腫瘍の外科学会 理事
平成18年~ 国際髄膜腫学会 評議員
平成18年~ 国際頭蓋内静脈路学会 評議員
平成20年~ アジア・オセアニア頭蓋底外科学会 理事
平成22年 日本脳腫瘍の外科学会 会長
平成23年~ 日本間脳下垂体腫瘍学会 理事
平成23年~ 一般社団法人日本脳神経外傷学会 理事
平成24年 日本インド脳神経外科会議 会長
平成25年~ 一般社団法人日本脳神経外科学会 理事
平成27年 第24回脳神経外科手術と機器学会 会長
平成28年 第7回世界頭蓋底外科学会 会長
平成28年 第28回日本頭蓋底外科学会 会長
平成28年 第9回世界髄膜腫学会 会長
平成29年 第32回日本脊髄外科学会 会長
平成29年 第8回アジアスパイン学会 会長