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弘前大学大学院医学研究科長・医学部長 若林孝一先生

弘前大学大学院医学研究科長・医学部長 若林孝一先生
進路の決め方

Q1.弘前大学医学部の特色についてお聞かせください。

弘前大学医学部は1944年に青森市に設立された官立青森医学専門学校を母体としています。青森医専は戦災によりその存続が危ぶまれましたが、弘前市に移転して命脈を保ち、1949年に弘前大学医学部となりました。東北地方では、東北大学医学部に次ぐ二番目に長い歴史を持つ伝統のある医学部であり、これまで医学科では約6400名の卒業生を輩出してきました。弘前大学医学部は社会貢献の面において地域医療・教育・研究のバランスの整った大学であると思います。
研究面では、医学科と附属病院をあわせ300名を超える教員を有しています。現在、15の基礎医学系講座、29の臨床医学系講座、11の寄付講座があり、各講座では特色ある先端的研究が行なわれています。付属の教育研究施設として、脳神経血管病態研究施設、高度先進医学研究センター、子どものこころの発達研究センターがあり、生活習慣病研究や社会の疾病構造の特性を踏まえた研究(がん、心疾患、脳疾患等)を展開しています。特にこの地域は全国的に見て脳卒中の多発地域という事情があり、古くから生活習慣病の研究は盛んに行なわれてきました。2013年にはCenter of Innovationに採択されています。
地域医療に関しては、青森県、秋田県、岩手県を中心とした北東北や函館などの道南の地域医療を担ってきました。附属病院には33の診療科があり、青森県における医療の中核的役割を担っています。他県であっても文化圏、医療圏は青森県に所属している地域に関しては、弘前大学医学部が中心となって地域医療活動を行ってきました。この地域における弘前大学医学部の役割は非常に大きなものがあると考えています。
地域医療への貢献に加え、県内唯一の高度救命救急センターは被ばく医療や高度救命救急医療の拠点となっています。青森県には六ケ所村に代表されるように原子力関連の施設が多く、被ばくなどの放射線に関する研究も多く行われています。附属病院には被ばく医療総合研究所が隣接しており、2015年に弘前大学医学部は国の原子力規制委員会から原子力災害医療・総合支援センター及び高度被ばく医療支援センターに指定されました。現在では、東北・北海道における被ばく医療の拠点として位置付けられています。被ばく医療に関する教育も重要と考えており、学生に対して、被ばく医療の講義・実習などを他の大学よりも多く行っています。弘前大学医学部全体として被ばく医療や高度救命救急医療を重視していく方針です。

弘前大学医学部

Q2.弘前大学医学部が育成したい医師像、そのための教育カリキュラムの特徴について教えてください。

弘前大学医学部の教育の特色は3つあります。
一つ目は地域を志向した医学教育です。一年次から早期臨床体験実習を行い、地域の施設に出向いて実習を行います。臨床医学入門では津軽学という講義があり、白神山地の魅力や津軽弁について学習します。二年次には地域医療入門という講義において地域医療やへき地医療について実際に臨床に当たっている先生に講義をしていただきながら学びます。三年次は岩木健康増進プロジェクトという大規模健診に学生も参加して実習を行います。更に、六年次のクリニカルクラークシップでは四週間のへき地医療実習を義務付けています。
二つ目は社会に適応した教育です。一年次の医の原則という医学の入門的な講義では、医療倫理や研究倫理について授業をしています。二年次の被ばく医療学は、本学の被ばく医療総合研究所の先生方が講義を担当しています。被ばく医療に関しては四年次と五年次にも講義と実習の時間を用意しています。更に、四年次の医療安全学では薬剤被害や医療事故、医療安全について学びます。環境の変化に対応できる社会性の高い医師の養成を目指していますが、講義だけではどうしても限界があることも事実です。学生が講義を真面目に受講した上で、課外活動やクラブ活動を通して正しい倫理観や豊かな社会性を身に着けていくことを期待しています。
三つ目はリサーチマインドの育成です。三年次に研究室研修を行い、四か月間にわたってマンツーマンで研究の手ほどきを受けることが出来ます。最後には全員が英語で学会形式のプレゼンテーションを行います。この授業をきっかけに学会で研究成果を発表したり、論文を作成したりする学生もいます。
教育活動は、最新のカリキュラムに対応しながら、学生一人一人と向き合って丁寧な指導を行っています。国際分野別専門認証に対応した新しいカリキュラムに変更して4年目を迎え、来年度からは実習授業を72週に増やす計画です。実習時間が増えてもカリキュラムが圧迫されないよう、以前よりも半年前倒しして、二年次の前期から本格的な医学の講義を開始しています。一方、学生がゆとりを持って勉強できるよう、カリキュラムの改善を繰り返していますが、最近の傾向として、留年は1、2年生に多いのが特徴です。教育する側もさらなる改善が必要かと思いますが、このような傾向は全国的なものですので、入学直後からしっかり勉強するという学生の意識も大切かと思います。
大学での勉強についていけない学生や、学生全体の学力低下には特別の注意を払っています。入試制度の違いによって学生に学力の差があるようには感じませんが、多浪して入学してくる学生の中には入学後に伸び悩む学生もいるのが現状です。また、遅刻や欠席が多く、レポートの提出期限を守らないなど、社会生活に問題のある学生もいます。生活習慣の乱れは学力の低下に直結しますので、そういった学生には積極的な指導を行っています。また、学生が家庭やプライベートに問題を抱えている場合は丁寧なサポートが必要と考え、個別に面談を行ったうえで、カウンセリングなども適宜行っています。
学生の卒業後の進路ですが、AO入試を含む地域定着枠で入学した学生は卒業して研修後も青森に残って研究や臨床を行なっています。それ以外の入試制度で入学した学生は、出身地や青森県外で医師として活動する人が大半ですが、青森県外の高校から入学した学生の二割ほどは青森に残ってくれており、関東出身で卒業後も青森に残る人も少なくありません。弘前は小さい街ですが、都会の喧騒からは離れていて過ごしやすく、冬の寒ささえ乗り越えられればとても良い街だと思います。

弘前大学医学部

Q3.先生ご自身の事についてお聞かせください。

私は富山県出身で、高岡高校から富山医科薬科大学医学部(現:富山大学医学部)に進学しました。私が受験した年は一期校、二期校という受験制度で入試が行なわれる最後の年でした。受験に際して医学部なら金沢か富山に行こうと考えており、東京や新潟の大学はあまり検討しませんでした。当時は受験勉強といっても塾なども少なく、専ら自習や高校での勉強が中心でした。部活動も行っていて、勉強と上手く両立していたように思います。
医学部への進学は特に誰かに相談することなく、自分で考えて決めました。子供の頃から博士や科学者にあこがれており、どちらかと言えば理科系に進むことを考えていましたが、医学部への進学を決めた直接のきっかけは母の病気でした。母は私が中学校に入学する頃に重い腎臓病に罹ってしまい、入退院を繰り返すようになりました。病と闘う母の姿を見て医学部への進学を決意したのですが、医学部に入学した年に母は突然亡くなってしまいました。目標を見失って暫く呆然としましたが、その期間が医師というものについて深く考えるきっかけになり、病理学と神経学に興味を持つようになりました。研究の道に進んだ一番の理由は、医学部五年の夏休みに参加した新潟大学脳研究所のセミナーで将来恩師となる生田房弘先生に出会ったことでした。先生は神経病理学の研究をしていたため、自分の興味と合致するところがあり、研究の道に進むことを決めました。その後海外でも研究活動を行いましたが、時間や労力、資金を大量につぎ込んだ大規模なプロジェクトだけでなく、なるべく少ないコストで大きな成果を挙げようとする合理的な研究を見て、大きな刺激を受けました。帰国後は教授選考を経て弘前大学医学部に赴任し、今に至っています。現在は研究と教育、病理診断を行っています。脳の分野でも再生医療を応用した治療が研究されていますが、運動を司る機能は回復しても、過去から蓄積した記憶を再生することは不可能であり、根本的に脳を新しいものに取り換えると言ったことは出来ません。したがって、脳疾患を予防する、特に生活習慣を改善することは非常に重要です。最近の研究では、糖尿病とアルツハイマー病との関連も明らかになってきています。生活習慣は大人になってから改善することが難しいこともあり、小学生、中学生のうちから適切な教育を施すことが重要です。弘前大学では青森県の教育委員会と協力しながら、「健康教育」を行なっています。初期段階では弘前大学医学部の医師が出向いて授業を行なっていますが、将来的には小中学校の先生方に教育してもらえることを目指しています。

ねぷた祭

Q4.弘前大学医学部を志望する受験生にメッセージをお願い致します。

弘前は春には日本一の桜があり、夏はねぷた祭、秋にはりんごが実り、冬にはスキーや温泉が楽しめる城下町です。都会の喧騒から離れ、学生生活を満喫できると思います。
個々の受験生が医学部を志望する動機は尊重したいと思いますが、面接などを見ていると志望動機に地域医療と答える受験生があまりにも多いように思います。医学は山に例えられ、山には頂とすそ野があります。地域医療はすそ野であり、医学研究は山の頂です。弘前大学医学部では、同じ人が山を上り下りしながら、頂に登って最先端の研究に触れ、すそ野での臨床や地域医療に活かす「循環型医師育成」を目標としています。弘前大学医学部を目指す受験生の皆さんには是非、臨床だけではなく研究にも目を向けて医学部を志望してほしいと考えています。

関連リンク 弘前大学ホームページ

わかばやしこういち
若林 孝一先生 略歴

現職
弘前大学教育研究院医学系 教授

最終学歴
昭和60年 3月   富山医科薬科大学医学部医学科 卒業
平成 元年 3月   新潟大学大学院医学研究科 修了

職歴
平成 元年 4月   新潟大学医学部附属病院 医員(平成元年11月まで)
平成 3年 4月   新潟大学医学部附属病院 医員(平成3年9月まで)
平成 3年10月   新潟大学脳研究所 助手
平成 8年11月   新潟大学脳研究所附属脳疾患解析センター 助教授
平成12年 2月   弘前大学医学部附属脳神経血管病態研究施設 教授
平成18年 2月   弘前大学医学部附属脳神経血管病態研究施設長(平成19年3月まで)
平成19年 4月   弘前大学大学院医学研究科附属脳神経血管病態研究施設 教授
           弘前大学大学院医学研究科附属脳神経血管病態研究施設長
                                (平成28年1月まで)
平成27年10月   弘前大学教育研究院医学系 教授
           (弘前大学大学院医学研究科附属脳神経血管病態研究施設専任担当)
           弘前大学教育研究院医学系長(現在に至る)
平成28年 2月   弘前大学大学院医学研究科長,弘前大学医学部長(現在に至る)

研究分野
脳神経病理学

学位
平成 元年 3月23日   医学博士の学位授与(新潟大学)