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名古屋大学大学院医学系研究科長・医学部長 門松健治先生

医学部進路の決め方

Q1.名古屋大学医学部の特徴についてお聞かせください。

名古屋大学医学部は、明治4年に名古屋藩に設立された仮医学校、仮病院として発足して以来約150年の歴史をもつ伝統ある学部です。現在、医学部には医学科と保健学科の2学科あり、現代の医療をリードする人材の育成に取り組んでいます。
優れた臨床医の育成はもちろんですが、特に研究医や研究心を持った臨床医の育成に力を注いでおり、入学試験の段階から研究医志望の受験生を対象とした推薦入試(平成20年度入試から)などを行っています。一般入試で入学してくる学生の研究に対する関心も高く、1年生に聞いてみると約半数の学生が研究に興味を持ってくれているようです。
研究医、研究心を持った臨床医の育成は日本全体の課題でもあります。名古屋大学医学部では、平成3年度から基礎医学セミナー(3年次に6ヶ月間基礎医学研究室で研究する制度)を開始し、平成19年度にMD・PhDコースを設置しました。さらに平成23年からは、東京大学、京都大学、大阪大学の医学部と協力して、基礎医学研究者育成のためのプログラムを実施しており、学生の研究会を立ち上げるなど、大きな成果を得ています。このプロジェクトの発足以降、多くの学生が、学部生の段階から研究室で熱心に研究に励むようになりました。現在では約100名の学生が、それぞれ興味のある研究室に所属して研究活動を行っています。将来、学生が臨床医を目指すとしても、研究のマインドを持っているかそうでないかは、臨床の現場で活躍する上で大きな違いになります。日本における臨床研究のさらなる発展のためにも、研究心を持った臨床医の育成は大きな意義のあることだと考えています。
名古屋大学医学部の学生は高い志を持った学生ばかりです。海外の大学に留学して医療を学びたいと考える学生も多く、6年次に20名ほどの学生が海外で研修を受け、単位を取得しています。また、大学院でも最先端の研究が日々数多く行われています。東海地方にはトヨタを中心に世界的な技術やノウハウを持った企業が多く、医工連携プログラムなどで共同研究を行っています。このような名古屋大学医学部の様々な活動を多くの人々に知っていただけるように、ホームページなどを用いた情報発信にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。

名古屋大学医学部

Q2.先生ご自身のことについてお聞かせください。

私は鹿児島県の出身で、高校は鶴丸高校に通いました。鶴丸高校からは、医師として活躍している卒業生も多くいらっしゃいます。私の場合、ありきたりですが野口英世の伝記を読んだことが医師を目指すきっかけであったと思います。両親も私が医師を目指すことをとても応援してくれました。受験勉強は高校での授業や、補習授業などを中心に勉強しました。もっとも高校生の頃よりも、中学生の頃の方が一生懸命勉強していたように思います。中学時代の勉強のおかげかはわかりませんが、九州大学医学部に合格することができました。
卒業して医師になってからは、大学在籍時よりも必死で勉強していました。当時の九州大学医学部には、卒業後2年間研修医として研修を受け、その後4年間は大学院で研究をするという慣習があり、私もそれに従って研修と大学院での研究を行いました。今思えば、両方の経験を若くして積むことができたことは後に非常に良い影響があったと思います。その後、鹿児島大学医学部で助手を務めている時にアメリカの国立衛生研究所へ留学しました。言語も文化も異なる異国の地で3年間生活したことはとても価値のある経験でした。
帰国後、鹿児島大学へ戻って研究をする予定でしたが、助手時代に仕えていた教授が名古屋大学へと異動しており、それに伴って名古屋大学へと赴任し、その後25年間名古屋大学医学部で研究を行ってきました。名古屋に来てから本格的に研究者として活動し、多くの人達に助けてもらったおかげで成長することができたと思います。つまり私は名古屋大学に育ててもらいました。現在、教員として働いていて、学生に授業をしたり、大学院で学生を指導したりすることができるのは非常にありがたく、恵まれていると思っています。
研究をする上で大切なことは、諦めずに取り組むこと、新しいことが好きであることの2つであると思います。その上で、俯瞰的な視野を持って研究に取り組むことで、大きな成果が得られるのではないでしょうか。

名古屋大学医学部

Q3.先生の研究についてお聞かせください。

私は子どもに興味があって小児外科に所属しました。入局してから3ヶ月間は覚えることも多く、またその期間で自分の印象が決まることから必死で努力するようにと、先輩から助言をもらったことを覚えています。医師として臨床を始めてからすぐに神経芽腫という小児がんと出会い、この病気の治療に取り組むことになりました。神経芽腫は現在でも生存率40%ほどしかない病気で、治すことの大変難しい病気ですが、当時はただただ必死で治療にあたりました。
本格的に神経芽腫の研究を行うようになったのは、生化学の教授になってからでした。研究を行う上で、自分が臨床を行っている時から抱いていた問題に取り組み、今まで見えなかったものが見えるようになるのは研究の醍醐味であり、喜びでもあります。基礎研究の面白さは、誰も気づかないところに着目し、その向こう側にどのような仕組みがあり、どのように関連しているのかを知ることにあります。少しずつ本質に近づいて論文を書き上げるステップを重ねるのが研究であり、基礎医学の研究者にとって論文は自分の命のように大切なものです。
近年は、基礎医学の研究を行うにあたって、分子生物学や生化学の知識のみに頼った研究はあまり重要視されなくなってきました。基礎医学の研究を行って得た発見を、臨床的な観点から重要なのかそうでないのかを判断できる能力が重要視されるようになってきています。また、臨床で得られるデータは、マウスを用いた実験では得ることのできない貴重なものばかりです。理論的に予測できるマウスのモデルよりも、実際の臨床から得られるデータの方が大切な事実を教えてくれることがあります。基礎医学で得られた新たな知見が臨床医学を発展させるという従来の流れから、基礎医学と臨床医学が双方を発展させるという新たな流れに研究が変わりつつあるのです。このような流れの中で、臨床研究で得られた膨大なデータを活用するにあたって、ごく近い将来AIが非常に大きな役割を果たすことになると思います。また、海外と比較すると、病床数などの違いから、日本は臨床研究の面で海外に大きく遅れをとっています。海外に負けないように臨床データを正しく集積することもこれからの医学をさらに発展させるために必要になると考えています。

Q4.名古屋大学医学部を目指す受験生にメッセージをお願いいたします。

医師になるには全人的な能力が必要になると思います。今はカリキュラムが見直され、1年次から医学教育が行われるようになりましたが、学生には教養を身につけることも大切であることを理解して欲しいと思っています。教養や他者への配慮、思いやりがないと医師として活躍することは難しいでしょう。
名古屋大学医学部は高い志を持った学生を求めています。ぜひ、自然の声に耳を傾け、科学に貢献したいという思いのある学生が受験してくださることを期待しています。

関連リンク 名古屋大学ホームページ

かどまつけんじ
門松健治先生 略歴

学歴
昭和57年 3月 九州大学医学部 卒業
平成元年11月 九州大学大学院 医学博士

略歴
昭和 57年 4月 福岡市立こども病院外科
昭和 57年 11月 九州大学医学部附属病院医員(研修医)(昭和59年3月まで)
昭和 63年 4月 鹿児島大学医学部助手
平成 元年 4月 九州大学医学部附属病院医員
平成 2年 4月 鹿児島大学医学部助手
平成 2年 9月 アメリカ国立衛生研究所客員研究員
平成 5年 10月 名古屋大学医学部助手
平成 6年 5月 名古屋大学医学部講師
平成 8年 8月 名古屋大学医学部助教授
平成 12年 4月 名古屋大学大学院医学研究科助教授
平成 14年 4月 名古屋大学大学院医学系研究科助教授
平成 16年 9月 名古屋大学大学院医学系研究科教授
平成 21年 4月 名古屋大学総長補佐(創薬科学担当)(平成24年3月まで)
平成 24年 3月 名古屋大学大学院医学系研究科附属医学教育研究支援センター長
平成 24年 4月 名古屋大学総長補佐(研究推進担当)
平成 24年 4月 名古屋大学大学院医学系研究科副研究科長
平成 27年 4月 名古屋大学予防早期医療創成センター長
平成 29年 4月 名古屋大学大学院医学系研究科長・医学部長

専門分野(専攻)
分子生物学